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「レイルウェイ〜運命の旅路」/映画では語られなかった言葉のこと。

映画「レイルウェイ 運命の旅路」(原題: The Railway Man)が4月19日から日本で公開されるそうです。

メインキャストはコリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田真司という豪華な顔ぶれ。豪英合作で昨秋トロント映画祭で公開された映画ですが、第二次世界大戦のアジア戦線で日本軍の捕虜となったスコットランド人下級将校エリック・ローマクスの体験にもとづく実話です。

私はこの映画を一足早く、1月にロンドンに行った時に観てきました。豪華キャストに惹かれたという面もありますが、実はローマクス氏の物語は第二次世界大戦終戦50周年である1995年にBBCでドラマ化されていて、その印象が強く残っているのでこの映画版もぜひ見ておきたかったというのが主な理由でした。

BBCドラマ版は“Prisoners in Time”というタイトルで、ジョン・ハートがローマクス役を演じていましたが、永瀬氏の役を演じたのは日本人俳優ではなかったのがちょっと残念でした。ドラマ版はストレートにローマクスと永瀬の再会を中心に据えた構成でしたが、映画版はエリックとパティの関係に重点を移し、ラブストーリーという側面も併せ持つ物語に仕上がっています。日本にとっては黒歴史とも言うべき内容ですが、日本人にもぜひ観て欲しい映画です。

BBCドラマ“Prisoners in Time”で特に印象に残っていたシーンがありました。ローマクスと永瀬が長い時を経てタイで再会、対決する場面です。20年近く前に一度見ただけのドラマなので正確なセリフは覚えていませんが、ドラマのクライマックスであるこの場面で永瀬がローマクスに

「なぜ私をそんなに憎むのか?私はあなたを拷問した張本人ではない。通訳をしただけだ」

と言います。ローマクスはそれに答えて、

「しかし拷問者の声となったのはお前だ。何年も記憶に刻まれ自分を苛み続けているのは、お前の声なのだ」

と答えるのです。

映画「レイルウェイ」でのふたりの再会シーンではこの対話は出てこなかったので、そのシーンが原作にもとづいていたのかドラマ脚本家の創作部分なのかが気になってしまい、確認のためロンドンから帰る前に原作も買いました。仕事中の休憩時間にちょこちょこ読んでいたのでやっと読了したところです。

原作によると実際にはこういう対決場面はなかったのですが、ローマクス氏にとってこの永瀬という通訳がどんな存在だったのか、という記述があり、このシーンはそれにもとづいて書かれていたようです。

I thought often about the young interpreter at Kanburi. There was no single dominant figure at Outram Road on whom I could focus my general hatred, but because of his command of my language, the interpreter was the link; he was centre-stage in my memories; he was my private obsession. His slurred and struggling English; his endless questions; his repetitiveness; the way he gave voice to the big torturing NCO: he represented all of them; he stood in for all the worst horrors.

(From “The Railway Man” by Eric Lomax)

他人の声となる役割である、通訳という仕事について考えさせられる一文です。

原作であるエリック・ローマクスの自伝”The Railway Man“は「泰緬鉄道 癒される時を求めて」という題で1996年に邦訳出版され、その後絶版になっていたのですが、今回映画公開に合わせて改題再刊されています。壮絶でドラマティックな映画とは異なり、淡々とした文章で幼少時の体験から従軍と捕虜体験、戦後の日々、そして永瀬氏との再会が綴られています。

The Railway Man by Eric Lomax (ペーパーバック) ISBN: 0099583844

エリック・ローマクス著、喜多迅鷹・喜多映介訳 レイルウェイ 運命の旅路 (角川文庫) ISBN: 4041012848

満田康弘著 クワイ河に虹をかけた男―元陸軍通訳永瀬隆の戦後 (教科書に書かれなかった戦争) ISBN: 4816611029

* Featured image by makilica [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

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