... 日本語の投稿ヒント思うこと翻訳の話/News & Thoughts

あなたの時給はいくらですか?

昨日Twitterの通翻クラスタTLで、こんなつぶやきが流れてきました。

リンク先は仕事の 外注先をオンラインで探す「クラウドソーシング」サイト。様々な分野でフリーランスの仕事をしている人が登録していて、クライアント側が仕事に募集をかけるとフリーランサーが見積りを提示し、集まった見積りの中からクライアントが選んで発注をかける…という仕組み。類似のサイトは日本でも海外でも増えていて、ライターやウェブクリエイター向けの仕事が多いですが、翻訳案件もあるようです。

上のつぶやきでリンクされていた案件は、こういうものでした。リンクが流れてきた段階ではすでに募集期間は終わっていて、添付されている原文も開けません。

 

ランサーズ案件

 

英文契約書の和訳案件で、量はA4×30枚。30枚という枚数だけ見ても実際の文章量はわかりませんが、まあ30枚もあるんだからワード数もそれなりにありそうです。そして条件として「プロの翻訳者限定」「報酬は2万円以内」とあります。

ランサーズでは案件に興味をもった人が見積り提示前にクライアントに質問することができるのですが、質疑応答の内容はこうなっていました。

image2

ワード数がここに出ていますね。

ざっくり見て、1万5千Wordくらいあります。2万円ですと1Word 約1.3円」。

クライアントの方は「意味が間違いなく訳されていれば契約書的言い回しは必須ではありません」と言っていますが、「超抄訳でよろしいのでしょうか?」という質問には回答していません。

例えば

Should Lessee at any time be in default with respect to payment of rent for a period of ten (10) days after written notice from Lessor; or should Lessee be in default in the performance of any other of its obligations under this Lease for thirty (30) days after written notice from Lessor specifying the particulars of the default; or should Lessee vacate and abandon the Premises; or if a petition in bankruptcy or other insolvency proceeding is filed by or against Lessee, without dismissal within thirty (30) days of filing; or if Lessee makes any general assignment for the benefit of creditors or composition; or if a petition or other proceeding is instituted by or against the Lessee for the appointment of a trustee, receiver, or liquidator of Lessee or of any of Lessee’s property pursuant to laws for the benefit of creditors; or if a proceeding is instituted by any governmental authority for the dissolution or liquidation of Lessee; then and in any such events, Lessor, in addition to other rights or remedies it may have, shall have the immediate right of reentry in the Premises, and after five (5) days prior written notice to Lessee, may remove all persons and property from the premises.

という文章があったとして(この案件の文書ではなく、適当なオフィス賃貸契約書テンプレの一例から引いてきました)、これを

借主が家賃等を滞納したり、夜逃げしたり、破産したり、借金で首が回らなくなった場合、貸主は借主を貸オフィスから立ち退かせる権利がある

と訳しちゃってもいいのか?たぶん駄目ですよね(ちょっと超抄訳すぎか^^;)。契約書的言い回し満載の原文ならを抄訳ではなく全文訳出するなら、訳文も契約書的言い回しのままにする方がむしろ簡単なんですが…。

 

では料金の話に戻って、この数字を試しに時給に換算してみます。

翻訳者が1時間でどのくらいの量を翻訳できるのか、というのはもちろん一概には言えません。翻訳案件は単純な内容で繰り返しが多いものから専門性の高い超難解文書までピンきりですし、同じ文書でも、継続案件で大量の翻訳メモリが蓄積されている場合には、作業は大きくはかどります。

が、翻訳業界では一般に英和翻訳の標準作業量の目安として「1日2,000ワード」という数字が挙げられることが多いので、ここでもこの数字を使ってみましょう。

1日の作業時間を単純に8時間と考えると、

2,000ワード÷8時間=250ワード/時間ですね。

上の案件は約15,000ワード。とすると、この翻訳にかかる時間は、

15,000ワード÷250ワード=60時間

クライアントの提示条件は「2万円上限」なので、この上限額を時給に換算すると、

20,000円÷60時間=333.33….円。

…(汗)

東京都内ならセブン-イレブンのアルバイトでも最低時給900円くらいは貰えるもの。英文契約書の翻訳はその半分以下ですか…。プロの翻訳者限定の仕事なのにこれはいくらなんでも失礼じゃないでしょうか。

ところが、この募集にはなんと10人からの見積り提示があったというから驚きです。実際の見積額は見ることができないので、この案件を獲得した人の提示額がどのくらいだったのかはわかりません。

 

逆に、セブン-イレブンのバイト並みの報酬を目指すなら、この案件ではどのくらいの料金をチャージするべきなのか?

60時間×900円=54,000円

繰り返しますが、「英文契約書翻訳はセブン-イレブンのアルバイトと同程度の仕事」と考えた時の料金で54,000円です。

ランサーズで質問されていた翻訳者さんは「契約書の場合 1Word約10円前後が相場」と書いています。この数字が妥当かどうかはさておいて(個人的には契約書ならワード単価10円は相場というより最低ラインじゃないかと思いますが、最近は単価の締め付けが厳しいのでそんなものなのでしょうか)、相場料金だとどうなるでしょうか。

15,000ワード×10円=150,000円

ちなみにこれを時給に直してみるとこうなります。

150,000円÷60時間=2,500円。

英文契約書翻訳の時給、2,500円。高いでしょうか?安いでしょうか?

 

翻訳の料金は通常ワード単価(和文英訳なら文字単価)で決めるのですが、「その単価は時給に換算するといくらか?」という点を意識することは、翻訳者にとって大事なことだと思うのです。時給にすることで他の職種との単純比較が可能になり、自分が毎日手がけている翻訳という仕事の世間的な価値を、客観的に評価することができるからです。

 

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